4002号室が分からない UberEatsドライバーの憂鬱

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最近UberEatsドライバーの仕事を始めた。

 

UberEatsとはUberが始めたデリバリーサービスのことで、提携しているレストランやファーストフード店にネット注文すれば、自宅まで料理を届けてくれるというものだ。

UberEatsで料理を運ぶドライバーは個人事業主としてUberと契約を結んでおり、専用のアプリを使って現在地周辺のお店から来た配達のリクエストに応じて仕事をこなしていくという仕組みになっている。

 

 

 

私がUberEatsドライバーの仕事を始めたのにはいくつか理由がある。

まず、手軽に仕事を始められるというのがいい。

ネット上での簡単な登録作業を済ませ、事務所に行き簡単な説明を受けて専用のバッグを受け取るだけで、すぐUberEatsドライバーに仲間入りすることができる。

働く日にちも稼働する時間帯も全て自分の裁量ひとつで決めていい。

アプリに届いた配達リクエストでさえ、都合が悪ければ仕事を受けずに他の人に回してもよいのだ。

こんな自由な配達の仕事が未だかつてあっただろうか。

UberEatsは、間違いなくデリバリー業界に働き方改革を起こしている。

いや、”働き方革命”と言ってもいいかもしれない。

それくらい、従来の労働とは一線を画す働き方が出来るという点に大きく惹かれたのだ。

 

 

 

事務所での登録を終えた翌日、早速東京の港区を拠点にしてUberEatsドライバーの仕事を始めることにした。

港区は都内の中でも渋谷区と並んでUberEatsを利用する人が多い地域であるらしい。

ちなみに現在滞在している場所は港区からかなり離れたところにあり、UberEatsの仕事をきっかけに初めて港区内に入った。

六本木や西麻布、南青山などがあることからも分かる通り、富裕層が多い地域だということは以前から知っていた。

しかし実際に足を踏み入れてみると、想像以上に高層マンションがひしめき合う街並みに少し圧倒される。

港区エリアに入った後、アプリの設定をオンにして配達のリクエストを受けられる状態したら、すぐに通知音が鳴った。

現在地から1キロほど先にあるレストランからの配達依頼だ。

依頼を受け、お店に向かう。

レストランに着き、店員から料理を手渡されたあと、ピックアップ完了済みであることをアプリに知らせると、配達先の住所が表示された。

場所は1キロほど離れたマンションのようだ。部屋番号は4002号室と書いてある。

「4002号室?あまり聞き馴染みが無いけど4階の002号室ということかな?」

そんなことを思いながらも自転車を走らせ、目的地のマンションにたどり着いた。

指定された住所にあったのは、非常に立派な高層マンションだった。

入り口付近の張り紙によると、どうやら配達の人間は正規の入り口ではなく、非常用の通路から入る決まりになっているらしい。

非常用入り口に行ってみると、中に入るための扉に鍵がかかっていた。

すぐそばに管理室と繋がるインターホンがあったので、UberEatsの配達であることを伝えると、扉の鍵が空いた。

どうやらここにはセキュリティ会社の人が常駐しているらしい。

中に入ると自動ドアがあり、またしてもそばにはインターホンがあった。

今度は部屋番号を押し、呼び出しボタンを押して部屋の住人にUberEatsのドライバーであることを伝えた。

ここまでしてようやくマンションの中に入ることができ、エレベーターに乗ることができた。

高級マンションのセキュリティーはUberEatsの配達員にとっては厄介なものだ。

どれだけ面倒な手続きをこなしてセキュリティーを通過したとしても、報酬には一切反映されないのだから。

 

「セキュリティーがガチガチの高級マンションが多い港区を選んだのは失敗だったかな。」

 

そんなことを思いながらエレベーターに入った私は、先ほどの4002号室という数字の意味を理解する。

階数ボタンの中に”40″という数字があったのだ。

4002号室とはつまり、40階の02号室だったというわけだ。

今までの人生で高層マンションに入った経験がなかったので、すっかり勘違いをしていた。

しかもそのマンションは40階が最上階というわけではないらしく、そのあとに41、42、43…と続いている。

 

 

 

結局その後40階の02号室へと向かい、なんだかんだで無事に料理を届けることができた。

しかし、配達を終えて駐輪場へと向かう私の心境は複雑だった。

 

世の中には高層マンションの40階に住んでいる人がいる。

 

よくよく考えれば当たり前なのだが、今回そんな事を改めて実感した。

また、彼らの住まいはただ大きいだけでなく、常駐している管理人やセキュリティ会社の警備員によってガッチリと守られている。

高いお金を払って、快適さと安全を買っているのだ。

 

「どんな仕事をしていたらこんなマンションに住むことができるんだろう。」

 

UberEatsのアプリを見てみると、配達の報酬が表示されていた。

その額は412円。

この仕事は完全出来高制で、配達先までの距離や当日の天候、配達の需要の多さなどにより一回ごとに配達の報酬が決められる。

それらを考慮すると、412円というのは至極妥当な金額だった。

ただ、その時は少しだけ虚しい気持ちになった。

412円ばかりのお金をもらって月50万円以上のマンションに住んでいる人に料理を届けたからかもしれない。

豊かに見える人達の暮らしと自分を比較してしまったのだ。

 

「これから港区でUberEatsの仕事をする度にこういう気持ちになるのかなあ」

 

すると、マンションに入っていく住民らしき男性とすれ違った。

30代半ばくらいだろうか。

スーツ姿でいるところを見ると仕事終わりなのだろう。

顔を良く見てみると、目の下に大きなクマができている。

心なしか足取りも重そうだ。

 

これが高層マンションに住む代償か、と思った。

彼らは平日の朝早く会社に行き、終電ギリギリまで残業するという生活をかれこれ何年も続けているに違いない。

物分かりの悪い上司に頭を下げ、部下の軽率な行動の尻拭いをさせられることもあるだろう。

そうして辛く苦しいことにも耐えて手に入れたのが、あの暮らしなのだ。

 

一方、UberEatsのドライバーという仕事はノンストレスだ。

やりたいときにやり、辞めたいときに辞めてよい。

また基本的にはひとり仕事なので、人間関係で悩むこともない。

強いストレスの中で大金を稼ぐくらいなら、気ままに自転車を漕ぎながら働いて得た金で、慎ましく暮らすのも悪くないのかもしれない。

 

 

その時、ハッとあることに気付いた。

私は今、何をしていたのだろう。

パッと見ただけのスーツ姿の男性を、勝手に「お金持ちだけど真に幸せではない人」と決めつけていた。

そうすることによって溜飲を下げようとしていたのだ。

 

あの男性はもしかしたら資産家で、そもそもサラリーマンではないのかもしれない。

もしくはアフィリエイトや転売を1日数時間やるだけでストレスなく大金を稼いでいる人なのかもしれない。

親が大金持ちで産まれたときから高層マンションに住んでおり、お金のために働いたことがない可能性だってあるのだ。

それなのに想像上のストーリーで自分を納得させ、いい気分になろうとしていたなんて。

 

自己嫌悪だ。

 

やっぱりこの仕事、向いてないのかもしれない。

 

 

 


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